「患者さんのために」を考える。

先日、もう17年以上継続している、奈良にいる師匠の元への勉強に出向いてまいりました。

以前は週に1回通っていた研修。

今はどうしても忙しく、月に1回に減っておりますが、今でも行くたびに学びがあります。

あらためて治療を見学させていただき、以前よりもさらにシンプルになった印象。

あいかわらずの1本鍼で迷いがない。

それもただのシンプルではなく、膨大な理論と経験を踏まえた上でのシンプル。

 

中医学には「標本主従」という概念があります。

「原因と結果」、「根本と枝葉」を見極め、症状が複数あったとしても、その中での優先順位をつけ、ひとつひとつ順序良く片付けていくことが重要だという意味です。

症状が複数あるからといって、いろんなことが良くなるようにと複数の鍼を刺せば、効果が分散されますし、何がどう効いたのかがわからなくなります。

患者さんのために、複数の鍼を刺しておいた方がよいのではないだろうか、その方が喜んでもらえるのではだろうかと、迷いの心があればあるほど鍼の本数は増えていきます。

そのような迷いの心を振り切り、1本に絞り込むのだという信念が試されます。

「患者さんのために」、という心があればあるほど、たくさんのことをしてあげたいと思うのが人情です。

しかし、真の鍼医者はその人情をあえて捨て、ほんとうの意味で患者さんのためになる医療としての鍼を施す必要があります。

その姿勢をいつまでも見せ続けてくれる師匠に対し、あらためて感謝の気持ちがこみ上げてきます。

輝鍼灸院