美容の鍼、慰安の鍼、そして医療としての鍼。

今の鍼灸業界では、医療としての鍼がとても軽視されているように感じています。鍼を受けると心地よくリラックスできる、肌艶が良くなるなど、美容や慰安といった側面ばかりがクローズアップされ、まるでエステサロンの延長のようにとらえられています。

しかしながら、鍼のほんとうの価値は、そこにはありません。現代医学(西洋医学)では治せないような病や症状、こういったものに対し、違った観点からアプローチできる医学。これこそが伝統医学(東洋医学)の存在価値であり、真骨頂だと考えています。

 

なぜこのような事態になっているのか?そもそも、鍼灸師自体が鍼で病を治せるという事実を知らないのです。東洋医学を学んでいるはずなのに、「東洋医学は胡散臭い」などと思っている始末です。だから、鍼を慰安的なものととらえたり、美容のために用いようとしてしまう。

慰安や美容が悪いとはいいません。慰安や美容を求めている人々がいて、それを提供しようという人たちがいるのであれば、そこで需要と供給が成り立っているので、それはそれでよいでしょう。

しかし、ほんとうに自分自身が現代医学では原因不明であり、治しようのない病に罹った時、普段から慰安や美容の鍼を行っている鍼灸院に身体を預けようと思いますか?違うパターンとして、自分自身が原因不明の病に罹った時、普段から美容外科などを行っている病院で身体を診てもらおうと思いますか?私なら普段から真摯に医療を取り組んでいる医師に診てもらいたいと思いますし、多くの人はそうではないでしょうか。

繰り返しますが、慰安や美容の鍼をしたいならすればいい。医療としての鍼灸を強制したいわけではありません。しかし、私はほんとうに困っている人のために、いざという時に役立てるような医療・医学・医道としての鍼灸を追究し、困っている人にとって駆け込み寺となり得るような鍼灸院を目指しています。だから、普段から医療としての鍼灸を追究し、理論・技術ともに研鑽し続けています。美容や慰安などに手を出す時間も暇もありません。

先日のブログにも書きましたが、医療としての鍼灸を追究していく中で、患者さんとの関係性の中で慰安的な側面が現れることは事実ですし、それはあって然るべきものと考えています。しかし、それは副産物的についてくるものであって、はじめから目的とするものではありません。

慰安や美容だけではなく、ほんとうに困っている人のために医療としての鍼灸がある。この事実を、患者さんや、まだ事実を知らない鍼灸師にも伝えるために、今後も何らかの啓蒙活動を続けていきます。

輝鍼灸院