ご予約はこちら

院長ブログ 「世界を癒す一本鍼」

どうやってツボを選んでるんですか?

先日、ある患者さんから質問を受けました。

「先生は、どうやってツボを選んでるんですか?」

自分では当たり前のようにしていることなので深く考えたことはなかったのですが、たしかに患者さんからすれば不思議に思われるかもしれません。

今回は、私がどのようにしてツボを選んでいるのかを解説します。

まずは問診

神戸 鍼灸 問診

まず、患者さんにどのような症状があるのかを聞きます。

その時点でもっとも悩んでいる症状はもちろんですが、その症状が生じている原因や、発症までのメカニズムを明らかにするために、症状に関わりそうな事象(例:食欲・睡眠・便通の状況など)についてもお聞きします。

たとえば主訴が頭痛だとしても、いくつかのパターンが考えられます。

ストレス?風邪?疲労?食べ過ぎ?睡眠不足?

何が原因で、どのようなメカニズムで起きている症状なのか、あたりをつけていきます。

実はこの問診の時点で、ほぼ原因やメカニズムについては、おおよその把握はできています。

次に体表観察

神戸 鍼灸 名医

体表観察とは、舌や脈、手足や腹部・背部などにあるツボの状態を観察することです。

これらは東洋医学独特の診察法であり、そもそも舌や脈を診ない鍼灸は東洋医学ではありません。

これは皆さん、よく知っておいてください。

たとえば主訴が頭痛であり、原因がストレスだとします。

その場合、舌の先が赤くなったり、脈は少し硬めになったり、ツボの反応でいえばストレスと関わりの深い「肝の臓」に属するツボに反応が出やすくなります。

ですから、問診でおおよそ予想がついているので、これらの反応を優先的に観察していきます。

分析して1つのツボに絞り込む

神戸 鍼灸 1本

ここからがとても重要です。

問診情報だけである程度の診立てを行い、体表観察でも証拠がそろってきました。

ただし、原因が複数存在することもありますし、使うべきツボの選択肢も複数存在することもあります。

こういった時に、もっとも問題となっている原因は何なのか?

今の患者さんにとって、もっとも効果的なツボはどれなのか?

これらを絞り込める分析力・判断力・決断力が求められるわけです。

なぜ一つに絞り込む必要があるのか?

神戸 鍼灸 疑問

ここで、なぜ1本に絞り込む必要があるのか?という疑問が生じてくるでしょう。

その理由は、

1.たくさんの鍼をうってしまうと、どの鍼が効いたのかがわからない。たまたま効いて良くなることもありますが、効かずに治らなかった場合、何が問題で効かなかったのかを検証することができません。

2.次に、鍼は身体に対する信号のようなものです。「こっちの方向に進めば、身体はよくなる方向に進めるよ!」と案内することができます。しかし、何本も鍼をうってしまうと、身体にとっては複数の信号が送られてくるわけで、どちらに進めばよいのか迷ってしまいます。結果的に、身体の治ろうとする力は分散されてしまいます。

しかしながら、原因を明確に絞り込み、ここ!というもっとも効果的かつ最適なツボに鍼をうてば、まさしく「打てば響く」という言葉の通り、劇的に改善させることができます。

まとめ

神戸 鍼灸

いかがでしたでしょうか?

・まずは問診でおおよその予測を立てる。

・次に体表観察をして、証拠を挙げていく。

・最後に、原因を特定し、その原因にとって最適なツボを一つだけ選び抜く。

この一連の流れでツボを選んでいます。

言ってしまえば、たくさんの鍼をうっても効いてしまいます。

数うてば当たるといった感じで、複数の思い当たる原因に関わるツボに鍼を何本も打てば、軽いものであれば治ってしまいます。

しかし、少し難しい病や、複雑になってしまっている病となれば話は違います。

だからといって、そういった適当な鍼を続けていては、いつまで経っても鍼医者としての腕はあがりません。

それを師匠の藤本蓮風先生は、「奈良の吊るし柿、下手なりに固まる」という言葉で表現していました。

その教えを守り、私は1本の鍼にこだわり続けた結果、自分でも年を重ねるごとに力がついていることを実感することができています。

師匠の教えをひたすら守り続けて正解だったと思っています。

筆者プロフィール

原元氣 - Hara Genki -

輝鍼灸院 院長 / (一社) 北辰会 正講師 運営会議議長 / 森ノ宮医療学園 非常勤講師

2004年、北辰会創始者(現会長)である藤本蓮風先生に師事。内弟子生活を経て2008年に独立し、神戸市にて輝鍼灸院を開院。臨床の傍ら北辰会の正講師・運営会議長として会の運営および後進の指導に携わり、北辰会方式の啓蒙活動を行っている。日本では伝統鍼灸の真の価値が認知されておらず、美容鍼灸や現代鍼灸が主流となっている現状を覆すため、ブログや日々の臨床を通じて伝統鍼灸を広める活動をしている。

一覧に戻る