膀胱炎・尿路結石

膀胱炎・尿路結石

初診時の主訴は更年期障害とうつで来院され、現在は体調管理で当院に定期的に通われている患者さん。

50代後半ということもあり、少しずつ腰が弱りはじめ、最近は時々膀胱炎を発症してしまいます。

その都度、鍼をすれば治ることを実感されておられるので、発症するたびに駆け込んでこられます。

だいたい旅行や家庭の事情などで疲労がたまり、まずは腰痛など腰に違和感を感じ始めたあとに膀胱炎になるというのがいつものパターンになっています。

膀胱炎には東洋医学における「腎の臓」が大きく関与し、腎と表裏関係にある膀胱に症状として現れます。症状としては膀胱に現れるものの、背景には腎の弱りがあるのです。腰は腎の臓と関係が深いので、腰の症状と膀胱炎がリンクするわけです。

ですから、普段は膀胱炎にならないように腎の臓をフォローするような治療を行いつつ、膀胱炎を発症してしまった時は、膀胱を襲っている邪気を駆逐する。

このような治療を進めていくことになります。

中医学では膀胱炎や尿路結石は淋証という概念に含まれます。

以下にやや専門的になりますが、淋証(膀胱炎や尿路結石)に対する中医学的な考えを掲載しておきます。

淋証(りんしょう):膀胱炎・尿路結石etc

腎盂腎炎・膀胱炎・尿路結石・腎結石・膀胱がん

淋証とは頻繁に小便をする・小便がポタポタと漏れ出して刺し込むような痛みがある・残尿感・下腹部に引きつれるような痛みがあるなどを主な症状とする病症です。

腎盂腎炎・膀胱炎・尿路結石・腎結石・膀胱がんなどの泌尿器系疾患は、淋証の弁証論治を参考に治療することができます。

病因病機

外陰部を不潔にすると湿熱穢濁の邪が侵入し、上昇して膀胱を侵します。脂っこいものや甘いもの、味の濃いものや粘ったもの、辛いものや熱いものを過食すると、脾の運化機能に異常をきたし、湿が集まって熱を生じるので、湿熱が流入して膀胱の気化作用が働かなくなり、水道の通りが悪くなって発症します。

どちらの場合も、湿熱が関与してくるわけですが、はじめにも述べた通り、腎の弱りが背景にあるからこそ、こういった湿熱の邪が膀胱に容易に入り込んでしまうわけです。

淋証には複数の種類があり、血淋・石淋・膏淋・気淋・労淋と呼ばれます。

それぞれの病理と特徴をあげておきます。

血淋

〔病理〕

膀胱の熱が強く、熱が血絡を損傷して血を狂乱させると、血淋になる。

〔特徴〕

実証

小便が赤い、もしくは暗紫色の血塊が混じる・頻尿・尿量減少・渋って出にくい・激しい灼熱感・ひどくなると臍腹部までの引きつるような痛みがある。

虚証

小便がピンク色になる・排尿時の疼痛と出しぶる感じは強くない・手足と胸が熱くなる・腰と膝がだるい。

石淋

〔病理〕

湿熱に煮詰められて尿液が凝集し石になると、石淋になる。

〔特徴〕

ときどき尿に石が混じる・小便が出しぶる・排尿が突然中断する・尿道が圧迫されて痛む・下腹部痛・腰腹部の耐え難い絞られるような痛み・尿に血液が混じる。

なかなか石が出ず気虚を伴うものは、顔色に艶がない・精神萎縮・力が出ない。

陰虚を伴うものは、腰がだるく鈍痛がある・手掌部と足底部の熱・潮熱・寝汗。

膏淋

〔病理〕

湿熱が停滞して絡脈を塞ぐと、乳糜が正常なルートをはずれ、尿と混じって膏淋になる。

腎虚で乳糜を摂納できないと、膏淋になる。

〔特徴〕

実証

小便が米のとぎ汁のように混濁する・置いておくと綿状のものが沈殿する・尿に凝結した塊が混じる・血液が混じる・出しぶる・灼熱感を伴う刺痛。

虚証

長引いてなかなか治らない・渋痛は強くない・ポタポタと脂のようなものが漏れる・痩せる・頭のふらつき・耳鳴り・腰と膝がだるい。

気淋

〔病理〕

鬱積した怒りが肝を損傷して肝気が鬱結すると血流が悪くなる。あるいは気鬱が火に変わり、気と火が下焦に鬱滞すると膀胱の気化作用が働かなくなり気淋になる。

〔特徴〕

実証

小便が出しぶる・ポタポタと漏れて切れが悪い・臍腹部の満悶・ひどくなると脹痛が現れる。

虚証

頻尿・小便の色が澄んでいる・小便の切れが悪い・出しぶる感じは強くない・小腹部が脹満して下垂感がある・手で押さえると痛みが緩解し押されるのを喜ぶ・労働に耐えられない・顔色が白い。

労淋

〔病理〕

房事過多や過労、多産などの原因で腎気を損傷すると労淋になる。

〔特徴〕

小便はあまり赤くなく、出しぶる感じも強くない・ポタポタと漏れて止まらない・疲れると発症したり悪化したりする・軽減と悪化を繰り返す・なかなか治りにくい。

筆者プロフィール

原元氣 – Hara Genki –

輝鍼灸院 院長 / (一社) 北辰会 正講師 運営会議議長 / 森ノ宮医療学園 非常勤講師

2004年、北辰会創始者(現会長)である藤本蓮風先生に師事。内弟子生活を経て2008年に独立し、神戸市にて輝鍼灸院を開院。臨床の傍ら北辰会の正講師・運営会議長として会の運営および後進の指導に携わり、北辰会方式の啓蒙活動を行っている。日本では伝統鍼灸の真の価値が認知されておらず、美容鍼灸や現代鍼灸が主流となっている現状を覆すため、ブログや日々の臨床を通じて伝統鍼灸を広める活動をしている。

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