過敏性腸症候群(IBS)は、腸に器質的異常がないにもかかわらず、腹痛や便通の異常が慢性的に繰り返される病気のことです。
主な原因は、精神的ストレスなどの心理的要因や自律神経の失調が関係し、脳と腸が相互に影響しあう「脳腸相関」が関与していると考えられています。
中医学では、過敏性腸症候群は主に「肝」と「脾」のアンバランスが原因と考えられます。
精神的ストレスや疲労による「肝鬱気滞」と、消化器機能の弱さである「脾虚」が組み合わさった「肝脾不和」などの体質が関係し、これらの不調があらわれると考えられるわけですから、西洋医学の「脳腸相関」という考えと似ているところがあります。
この肝脾不和には2つのタイプがあります。
① 肝気犯脾(かんきはんぴ)
肝気が昂ぶり、脾を犯す。
わかりやすく表現すると、精神的なストレスや緊張があることにより、胃腸の機能を阻んでしまい、胃腸の動きを悪くするという意味です。
過敏性腸症候群の方は、初期段階としてまずこのパターンから始まることが多いのです。
この場合は昂り過ぎている肝の興奮をおさめ沈静化させてあげれば、胃腸の機能は自然と回復します。
このパターンの場合、胃腸の弱りを示すツボに鍼をする必要はありません。
肝の興奮をおさめるツボに瀉法と呼ばれる昂った肝の興奮を鎮める鍼を施せばいいのです。
このタイプになりやすい人の特徴として、もともと性格的に真面目な方、几帳面な方、完璧主義な方が多い傾向があります。
精神的に大らかになり、細かいことにこだわらないようにする必要があります。
とはいえ、このタイプの方はそう簡単に考え方などを変えることは難しいので、まずは鍼をして身体を調えることにより、結果的に性格が大らかになるようにしていきます。
身体は心の器なので、身体の方から緩めてあげると精神面も緩み余裕ができ、大らかな性格になることができます。
適度な運動(主に散歩)をして身体をほぐし、気の循環をよくしておくことも効果的です。
② 脾虚肝乗(ひきょかんじょう)
脾が虚していることに乗じて肝が昂るという意味です。
はじめは肝気が脾を犯すことによって起こることが多いのですが、徐々に脾の弱りが慢性化して酷くなると、今度は肝に対する治療では追いつかなくなります。
この段階になると、今度は弱ってしまった脾を補ってあげることを優先することになります。
脾の弱りを示すツボの中からもっとも反応のあるツボを選び、そのツボ一カ所にだけ気を補う鍼をしてあげるわけです。
そうすると脾が補われて結果として昂った肝が静まります。
このように、過敏性腸症候群は基本的に肝脾不和といって、ストレスを溜める「肝の臓」と、胃腸を意味する「脾の臓」のバランスによって起こるものなのですが、その段階によってどちらにアプローチするかが決まってきます。
過敏性腸症候群にはこのツボ!というものはないのです。
最近は、中学生・高校生など若い子にこういった病気が多く、当院でもたくさん診てきました。
今の学生は勉強に部活に忙しすぎますね。
もう少しゆとりのある生活が送れるようになればと思っています。





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