年配の方の治療は根気を要します。

もう3年ほど継続して通って下さる80代の女性がおられます。

電車に乗って住吉駅まで来て、駅から当院まで歩いてくるのも辛いようなのですが、がんばって通ってくれています。

はじめのうちは多くの症状がありました。

腰痛、臀部痛、膝痛、下半身に力が入りにくい、首の後ろの強い凝り、時々めまい発作。

特にはじめのうちは、首の後ろの強い凝りを訴えておられました。

 

身体を診させていただくと、五臓のうちの腎の臓が極端に弱っていることがわかります。

脈は一見幅があった力強く見えるものの底が抜けており、下腹部のツボもベコベコに弱っています。

植物でいえば根っこが弱り切っている状態なので、これは治すためには根気が必要ですし、時間もかかりますとお伝えして治療を開始しました。

 

時間がかかるといったものの、やはり80代の高齢で週に2回通い続けるのは大変だったようで、途中何度も「そろそろ間隔を空けてもいいですか?」「もうあきらめて通うのをやめようかと思っている」と、弱音を吐かれることもありました。

その都度、「時間はかかるけど、もう少しこのまま通って下さい。頑張ればもっと楽になりますよ。」と励ましながら治療を継続してきました。

 

あれから約3年が経ち、今ではめまい発作がほぼ発症しておらず、はじめの頃は「辛い辛い」と仰っておられた首の強い凝りもなくなっています。

その後しばらくは、臀部痛・膝痛を訴えておられましたが、今では生活する上では不自由ないほどの痛みに軽減されています。

現在は下半身の力の入りにくさが辛いようですが、その他の症状がほぼ消失もしくは軽減しており、ずいぶん楽になったと喜んでおられます。

 

週に2回、3年もかかると聞くと、「そんなに続けられない」と思われるでしょう。

しかし、高齢になってからの症状は、そんなに簡単には良くなりませんし、これに対して首や肩、腰や臀部などの局所に鍼治療を施し続けていても、きっと良くならないでしょう。

 

「なんでもかんでもささっと治りますよ。」と、甘いことばかり言うわけにもいきません。

どうしても時間がかかるものもあると、現実的な話もする必要があると思っています。

でも、時間をかけてでもこれだけ症状がよくなり、また身体の根っこを治すことができれば、このあとの老後も楽に過ごすことができます。

私は十分に価値あることだと考えています。

輝鍼灸院