伝統鍼灸解説ブログ

緑内障(緑風内障)

急激な視力低下・視野狭窄・眼球の圧迫感・眼球が硬くなる・瞳孔散大・瞳の色が淡緑色になるなどの症状があり、失明する危険性の高い眼科疾患。日本国内における失明原因の第1位を占めており、40歳以上の20人に1人が罹患している多い疾患です。現代医学的治療法の進化で予後は良くなっているが、放置すると失明の危険もあります。眼圧が正常範囲にありながら視神経が傷害される「正常眼圧緑内障」が増加しており、薬物療法(点眼・内服)・レーザー療法・手術などが行われています。

中国の医書では、「緑盲」「青盲」「緑風」などと記載され、急激に発症し視力を失うものを「雷頭風」と呼んでいる。中医眼科学では、眼圧が高い原発開放隅角緑内障を「青風内障」、眼圧が正常なものを「青盲」、原発閉塞隅角緑内障を「緑風内障」と呼んでいる。

1.肝胆風火

〔病理〕

七情が偏り、五志化火し、肝胆の火が旺盛となって内風が生じ、風火が目に上攻して気滞血鬱となり、房水が瘀滞積聚する。

〔特徴〕

発症は急激で頭痛が強烈。眼球の脹痛も、眼球を取り出したくなるほど酷い。視力が急激に低下し、甚だしい場合は失明する。眼球の硬さも酷い場合は石のようになる。

悪心・嘔吐・尿赤・便秘。

2.痰火動風

〔病理〕

肝鬱化火から津液を煎熬して、あるいは脾湿から痰湿を生じ、痰が鬱結して化火し、痰火が風を生じ顔面部の清竅を阻滞し気血津液がめぐらなくなることで発症する。

〔特徴〕

発症は急激で頭目の症状は「肝胆風火」と同様。

身熱・顔面紅潮・悪心嘔吐・胸脘煩悶・尿赤・便秘。

3.肝鬱化火気逆

〔病理〕

肝鬱化火によって気が上逆し、目を襲うことによって発症。

〔特徴〕

眼や頭の脹痛。繰り返し発症。視力の低下。眼球が硬くなり、酷い場合は石のようになる。抑うつ感・胸悶・曖気・頻繁に欠伸・食欲不振・のどの乾き・イライラが多い。

4.陰虚陽亢・風陽上擾

〔病理〕

陰血の消耗・虚損で肝陽上亢・肝陽化火し、風陽が目を襲って発症する。

〔特徴〕

頭目脹痛・瞳孔散大・目がかすみ、見えにくくなる。症状の緩解と悪化を繰り返す。健忘・眩暈・耳鳴り・五心煩熱。頬の紅潮・両目の乾燥・腰膝酸軟・心煩・不眠。

5.肝胃虚寒・飲邪上逆

〔病理〕

精神的抑うつが肝を傷め、思慮過度が脾を傷め、肝胃の気が虚し、清陽が上らないために濁陰が下がらず、飲邪が目を犯して発症する。

〔特徴〕

頭頂部の痛み・目の脹痛・瞳神散大・目のかすみ・乾嘔・涎をよく吐く・腹満・食欲不振・全身倦怠感・寒冷や雨天時になると悪化・手足の冷え。

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