気を集める、気を散らす。
当院では刺さない鍼を使い、翳すだけで治療する方法を用いることがあります。
主に小さなお子さんや、体力の乏しい高齢の方、敏感な体質の方に使います。
先日、赤ちゃんの治療をしている際、赤ちゃんはどうしても動いてしまうので、
「今、気を集めてるから動かないでね~」
と話しながら鍼を翳していると、お母さんから
「気を集めるってどういうことですか?」
と質問を受けました。
これは刺さない鍼に限らないのですが、鍼をする際にはツボにある気を散らしたり、集めたりといった操作をしています。
気が足りなければ補い、気が多すぎれば散らし、バランスを保つように調整するのです。
そのためにはツボに気が不足しているのか、それとも多すぎるのかを把握する感覚が必要ですし、更には鍼で気を補ったり、散らしたりする技術も必要となります。
必要なツボを選択すること
ただその前に、どのツボに鍼をするのかを選択することが重要です。
問診をし、舌を診て、脈を診て、手足身体のツボを診た上で総合的に判断し、その時点での患者さんにとって必要なツボを選び出し、そのツボにとって必要な気を補い、不要な気を散らしていきます。
必要な気のことを「正気」、不要な気を「邪気」といいます。
便宜上「必要な気」「不要な気」と表現しましたが、本来は「邪正一如」であり「氣一元」です。
すべては同じ気なのですから、偏り過ぎないように調和させるように導けばよいのです。
邪気を散らすことにより、正気を助けることを「祛邪安正」、正気を助けることにより邪気を退けることを「扶正祛邪」といいます。
東洋医学は「気の医学」
全身の気が調和を取り戻せば、病が治る方向に向かっていきます。
気を集めるとか、気を散らすとか、なんだか怪しげな世界と思われるかもしれませんが、東洋医学は「気の医学」です。
こういった気の概念なしでは治療が成り立ちません。
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