【解説】不妊症は鍼灸で治そう|神戸 輝鍼灸院
近年、不妊症に対して鍼灸が有効であるという考えが広まっているようで、当院でもこれまで多くの不妊症でお悩みの方の治療に関わらせていただきました。
今はネットで調べると、不妊専門の鍼灸院なども増えていますが、「自律神経を調える」「身体の冷えをとる」「妊娠力を高める」などの文句を掲げており、実は東洋医学的な治療をしている鍼灸院はかなり少ないのが現状です。
患者さんの立場からすると、「鍼灸=東洋医学」と思われるのは当然ですが、舌も診ず、脈も診ないで鍼をするのは東洋医学ではありません。
東洋医学における不妊症の分類
東洋医学的な観点では、不妊症をいくつかのパターンの分けることができます。
1.精神的なストレスの影響を受けて気のめぐりが悪くなっている。
2.赤ちゃんを宿す下半身の力が弱っている。
3.血のめぐりが悪くなり、瘀血(おけつ:滞って固まった血)が子宮に溜まっている。
4.体内の水のさばきが悪くない、身体に湿気が蔓延している。(おりものが多いなど)
代表的な上記4つのパターンに加え、これらが複合的に交じり合うパターンもあります。
特に多いのが、1.2であり、この2つは関連しあうことが多くなります。
これまでの多くの臨床経験上、その中心となるのは「精神的なストレス」だと感じています。
精神的なストレスと不妊
まず精神的なストレスを受けると、身体は緊張を起こします。
身体が緊張すると肩を凝らせます。
肩を凝らせるということは、特に上半身が緊張しているということ。
これを気逆(きぎゃく)といいます。
身体の中の気が上半身に集中し、偏ってしまうのです。
上半身に気が偏ると、相対的に下半身の気が不足します。
これが、前述の1.精神的なストレスで気の巡りが悪くなる。
2.赤ちゃんを宿す下半身の力が弱る。
という2つが関連しあうというメカニズムとなります。
現代人は家庭・社会・友人関係、様々な場面で精神的なストレスにさらされています。
その上、「妊娠できない」というストレスは、女性にとっては大変なものです。
精神的なストレスが原因で不妊となり、不妊という病がさらなるストレスとなり、女性を襲うわけです。
東洋医学的な鍼には、不妊症に至るメカニズムの中でも核となる、精神的なストレスで病んでしまった身体を癒す働きがあります。
3.4であげた、血のめぐり、水のめぐりの悪さも、精神的なストレスによる気のめぐりの悪さが原因となり起こることが多いので、とにかく不妊症の治療で重要なのは、「精神的なストレスで生じた気の停滞」を取り除くことが重要なカギとなるわけです。
1本の鍼の重要性
東洋医学的な観点で身体を見つめ、治療をすることが重要であり、一般的な鍼灸院では東洋医学的な鍼灸が行われていないことが先に述べた通りです。
しかし、東洋医学的な鍼を行っている鍼灸院でも、何本も鍼を刺す方法ではあまり意味がありません。なぜならば、東洋医学では、病の原因と病に至るまでのメカニズムを重要視します。
しっかりと分析し、それを明確にしたならば、本来は鍼は1本で済むはずです。
それに対して、何本もの鍼を刺すのは、病の核心をとらえきれていないか、何本もの鍼を刺すことにより、患者さんの満足度をあげたいという邪な考えがあるからです。
体外受精、人工授精について
当院の患者さんでも、鍼灸を受けながら体外受精・人工授精などを受けられる患者さんは多くおられます。
私たちの立場から言えば、これらの治療が身体にかける負担は重いのは確かであり、できることならあまり受けていただきたくはありません。
しかし、患者さんの立場からすれば、どんな方法を使ってでも妊娠したいと思うのは当然ですし、できるだけよい状態で体外受精・人工授精を受けられるよう身体を調えたり、たとえ体調を崩したとしてもその後身体を調えたり、私たちの立場でできることをしていければと考えています。
上記の通り、体外受精などを否定はしません。
鍼で身体を調えたとしても、現代医学的な力を借りなければ妊娠に至らなかったであろう事例もたくさん経験しているからです。
しかし、私の考えとしては、少し時間はかかるかもしれませんが、原因に対してアプローチせず、身体が整わないまま妊娠しても、妊娠中・産後ともに大変な思いをすることが多いので、まずは鍼で身体を調え、自然に妊娠することをお勧めします。
まとめ
私の考えとしては、不妊症の治療といえど、まずは身体を調えることが先決だと思っています。
ただ妊娠すればよいのではなく、妊娠しにくい不健康な状態を健康な状態に整えた上で、結果的に妊娠に至るというのが理想です。
そのためには焦らず、少し時間をかけて身体を癒し、鍼だけでなくお伝えする養生法に取り組み、まずは健康な身体を取り戻しましょう。
不妊症の3症例について解説した記事があります。
こちらもぜひご覧になって下さい。
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