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院長ブログ 「世界を癒す一本鍼」

【診察法】なぜ脈を診るのか?

当院では治療の前後に必ず脈の状態を確認しています。

その理由を今回は解説していきます。

脈を診る上でもっとも重要なのは「胃の気(いのき)」があるかどうかです。

「胃の気」とは、食べ物を飲食したときに自分自身の力に変換する能力のことです。

何かを食べたとしても胃腸がうまく働かなければ、必要なエネルギーを体内に吸収することができず、下痢として出てしまったり、脂肪として身体に残ってしまいます。

この胃の気がしっかりしていれば、常に体内のエネルギーが充満しているので、外部からの攻撃に耐えることができます。

この外部からの攻撃に耐える力を「抗邪能力(こうじゃのうりょく)」と呼びます。

「邪気」に抗う力のことです。

この力を、邪気に対して「正気(せいき)」とも呼びます。

この正気と邪気が争い、正気が勝っていれば健康に近づき、邪気が勝っていてば病気寄りになります。

ですから、治療では如何に正気を盛り立て、邪気を退かせるかが重要になってくるのです。

様々な邪気

自然界には様々な邪気があります。

風邪・暑邪・湿邪・熱邪・燥邪・寒邪、これらの邪気が季節ごとに身体を襲ってきます。

それに耐えることができればよいのですが、身体が弱っているときは攻撃を受けてしまいます。

この時に起こる代表的な例が、いわゆる”風邪(かぜ)”です。

邪気は外部だけではありません。

体内にも邪気は発生します。

精神的なストレス、飲食の不摂生、運動不足など、様々な要因で気滞・邪熱・瘀血・湿痰などの邪気が生じます。

こういった様々な邪気に耐えうる力を持っているのかどうかを脈診で確認しています。

脈を診る意味

では、なぜ治療の前後に脈を確認しているのか?

それは治療前の脈より治療後の脈の方が良くなっていれば、治療が正しいと判断でき、良くなっていなければ治療が間違っていたと判断することができるからです。

つまり治療の効果判定です。

効果判定は脈だけでなく、舌や全身各所のツボの状況も含めて観察し、総合的に判断しますが、もっとも重要視するのは脈診です。

堅い脈が緩んだり、早すぎる脈が落ち着いたり、少なかった脈の幅が大きく出てきたり、弱々しかった脈に力が出てくるなどの反応が診られれば、治療が効いているということになります。

その場で肩こりが取れたり、その場で腰痛が楽になったり、関節の可動域が広くなったり、そのような直後効果や直後の変化を診るのではなく、脈が変化すれば効いていると判断します。

Instagramなどで「ほら!肩が上がるようになったでしょ!」というような見映えのよい動画などが拡散されていますが、そのようなその場ですぐに変わるものは、そもそも軽い症状であるか時間が経てばもとに戻ることが多いのです。

ほんとうの病気治しはそのように軽々しいものではなく、時間をかけてコツコツと徐々に治していくものです。

まとめ

まとめると、脈を診ている意味としては、①抗邪能力(邪気に抗う力)がどの程度あるのかを見極める。②治療の効果判定として使っている。という2点が主となります。

他にも、なぜ舌を診るのか?お腹を診るのか?背中を診るのか?などをシリーズでお伝えしていきますので、引き続きブログをチェックしていただけると嬉しいです。

筆者プロフィール

原元氣 - Hara Genki -

輝鍼灸院 院長 / (一社) 北辰会 正講師 運営会議議長 / 森ノ宮医療学園 非常勤講師

2004年、北辰会創始者(現会長)である藤本蓮風先生に師事。内弟子生活を経て2008年に独立し、神戸市にて輝鍼灸院を開院。臨床の傍ら北辰会の正講師・運営会議長として会の運営および後進の指導に携わり、北辰会方式の啓蒙活動を行っている。日本では伝統鍼灸の真の価値が認知されておらず、美容鍼灸や現代鍼灸が主流となっている現状を覆すため、ブログや日々の臨床を通じて伝統鍼灸を広める活動をしている。

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