【解説】低用量ピルについて
先日、(一社)北辰会の定例会で開催された古典ライブ。
「経閉・血崩」をテーマに、当会代表理事の藤本新風先生、学術部長の奥村裕一先生が講義をして
下さいました。
「経閉」とは無月経や月経が一時的に停止することで、「血崩」とは不正性器出血のことです。
不肖ながら私は座長を務め、進行を担当させていただきました。
低用量ピルのメリット
月経困難症、生理痛や過多月経の症状、月経前症候群(PMS)、子宮内膜症の緩和、卵巣がん、子宮体癌、大腸がんのリスク軽減などが挙げられます。
低用量ピルの注意点
最大のリスクは血栓症であり、また子宮頸がんや乳癌に関してはリスクが上がるという説もあります。
メリットや注意点などありますが、婦人科系の疾患でお悩みの方にとっては多大な恩恵があり、救われている方も多くおられると思います。
東洋医学的な視点でみると
上記にもあげた通り、ピルの服用により多くの恩恵があることは確かです。
一方、東洋医学的な視点でみると必ずしもよい現象とは思えないものもあります。
たとえば、月経時に出血が多すぎることに悩んでいる方が、ピルを服用することにより出血が少なくなれば、当然助かると思われることでしょう。
しかし、出血が多すぎるという現象が起こるのには理由があります。
それを無視して起きている現象だけを消してしまってよいものなのでしょうか?
月経時に出血が多くなり過ぎる理由の多くは、体内にこもり過ぎた「熱」にあります。
その熱が発散する場所を探して多量の出血として現れているにも関わらず、出血だけを減少させてしますと、熱は発散する先を失ってしまいます。
発散する先を失った「熱」は、当然ながら別の発散先を探します。
その一つが血管です。
中医学的には「血熱」と言いますが、熱が血管に迫り熱をもつわけです。
その結果として起きる現象の一つが「血栓」なのです。
副効能として
またピルの副効能として、肌荒れやニキビ・多毛といった現象が軽減されることもあります。
実はこれらの現象も体内の熱が皮膚上に発散された時に起こる現象であり、こういった現象が消えてしまうということも、単純に喜んでよいこととはいえない側面もあるのです。
逃げ場を失った熱は、またどこかで悪さをし始めます。
鍼灸にできること
ここまで述べたように、ピルの恩恵は確かにあるものの、東洋医学的に診ると危険な側面もあります。
とはいえあまりにも苦しい症状がある場合は薬に頼らざるを得ないでしょうし、否定することはできません。
こういった場面で鍼灸でできることは、まずはピルを服用しなくても済むよう、身体を整えてあげること。
もう一つは、ピルを服用したことにより逃げ場を失った熱が、違うどこかに影響を及ぼさないように、その熱自体をさばいてあげることです。
またその熱が発生する原因を見極め、熱が発生しないようにすることもできます。
こういった対処は、東洋医学的かつ中医学をベースとした鍼灸でなければ行うことができません。
現代医学的な考えに基づく鍼灸では、対応する理論を持ち合わせていないのです。
まとめ
ピルをはじめ、西洋薬による恩恵は多大なものであることは認めつつも、東洋医学的な視点からすると問題もあります。
根本的な問題を解決せず、表面上に起きている症状だけを抑え込んでいれば、いずれはまた他の大きな問題を起こしうるということです。
当院の場合、あまりにも症状が辛く、日常生活に支障をきたすレベルであれば、ピルに関わらず西洋薬の使用を無理に止めることはしません。
表面上の問題を西洋薬の力を借りて火消しをしつつ、こちらでは東洋医学的な視点で根本的な解決を試みるのです。
よく東洋医学と西洋医学の融合といわれますが、根本的な思想・哲学が違う両者は融合はできないと考えています。
しかしながら、互いの得意分野で協力することは可能です。当院としては、東洋医学の可能性を存分に発揮できるよう、引き続き東洋医学的な鍼灸の研鑽を続けていきます。
当院では鍼灸師のスタッフを募集しています。
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