【症例報告】卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)
卵巣のう腫とは
卵巣のう腫とは、卵巣内に液体や脂肪がたまってしまう、触るとやわらかい腫瘍のことです。なぜこのようなのう腫が形成されるのか、今のところ原因はまだよくわかっていません。これらのうち9割が良性であるといわれています。
初期の段階では、自覚症状はほとんどありませんが、進行してのう腫が肥大してくると、腹痛や腰痛、頻尿や便秘などを生じます。
のう腫が大きくなると、卵巣の根元が回転してねじれてしまう危険な「茎捻転」を起こすことがあり、激痛が生じます。
主訴の状況
患者さんは40代の女性。
主訴の状況としては、
・下腹部の右側にチリチリとした細かい痛みを感じる。
・温めたり、月経が終わると痛みは緩解する。
・卵巣嚢腫と診断を受け、当時は8cmほどの大きさだったが、仕事を減らして養生していたお蔭か、現在は5cmほどにまで小さくなっている。
・右乳房に痒みがある。
などの症状がありました。
診立て
証 肝鬱気滞血瘀 空間右
と証を立て、いつものように毎回1本だけ鍼をして継続しました。
わかりやすく説明すると、精神的なストレスにより気の巡りが悪くなり気の巡りが悪くなることにより血の流れも悪くなり、瘀血(おけつ)と呼ばれる悪い血の塊が体内にできてしまった。
その瘀血が、身体の右側に偏ってしまったがために右の卵巣に嚢腫ができたというストーリーです。
これらの状況を改善させるために最適な鍼を1本だけ施したのです。
治療経過
はじめのうちは週に2回のペースで通っていただき、3カ月目には体調が安定し身体のツボの反応も良くなっていたので、その後は週1のペースで施術を継続していただきました。
鍼灸施術をはじめて半年が過ぎ、最近の検診で卵巣嚢腫の大きさが問題のない大きさにまで縮小していることがわかりました。
現時点では特に治療の必要はないと医師から告げられたそうです。
まとめ
卵巣嚢腫が鍼で治るのかと驚かれるかもしれませんが、鍼灸施術で卵巣嚢腫だけでなく子宮筋腫が小さくなった例などは非常に多いですし、これも何か奇跡とかまぐれで起きているのではなく、医学としての鍼を学んでいれば、ある意味当たり前のことなのです。
伝統的な鍼灸を学んでいなければ、こういった事実は受け入れられないかもしれませんが、これは歴史的な経緯を踏まえたうえでの事実です。
ただし、すべての卵巣嚢腫や子宮筋腫が鍼で絶対に治るとはいえません。
程度の問題もありますし、しっかりと施術を継続できるか、養生を守れるか、様々な要因が絡み合うからです。
しかしながら、このように奇跡などではなく、理論的に病をとらえて治す方法があるという事実を知っていただければと考えています。
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