中医学では更年期症候群のことを、「経断前後症状」「絶経」「経断」などと呼びます。
更年期(閉経前後)は腎が弱り、腎に貯蔵されている「腎精」も不足しがちになります。腎は陰陽の根源的な力を担っているため、身体全体の陰陽のバランスが乱れやすくなります。ですから、更年期障害の治療のベースは「補腎(ほじん=腎の弱りを補うこと)」となります。
陰陽バランスが崩れるとは?
腎が弱ると根本的な部分の陰陽のバランスが大きく狂うので、ほかの部分にも大きく影響を及ぼします。ひとの身体を地球で表現すると、腎陽はマグマ、腎陰は海の水のようなものとイメージできます。
地球のマグマの熱量が減ったり、地球上の海の水が減ったりすれば、当然ながら地球上全体に影響を及ぼすでしょう?そんなイメージです。
だから、更年期というのは、いろんなアンバランスが起きても仕方がない時期なのです。
更年期障害は大きく2つのタイプにわけることができます。
- 潤いが不足して乾燥し、火照りが生じる『腎陰虚(じんいんきょ)タイプ』
- 疲れやすく身体を温める力が弱い&水はけが悪くなる『腎陽虚(じんようきょ)タイプ』
【腎陰虚(じんいんきょ)】
誰でも年齢とともに潤いは減って枯れていきます。潤いが不足した「陰虚(いんきょ)」の状態では、全身的に「乾燥症状」が目立ちます。若木は潤ってしなやかですが、老木になれば乾燥して枯れてきます。人も同じです。
また、陰と陽のうち、陽は身体を温めるエネルギー、陰はオーバーヒートしないようにする冷却水のようなもの。陰が減ると相対的に陽が多くなるため、陰虚では「ほてり」や「のぼせ」が現れやすくなります。これを「虚熱(きょねつ)」とか「陰虚火旺(いんきょかおう)」といいます。
陰虚タイプは、ホットヨガ・サウナなどで過度に発汗すると、身体の潤いを失って陰虚が悪化します。普段通りの環境で、普通に運動して適度な汗をかきましょう。
◆腎陰虚タイプにあらわれやすい症状
・閉経、経血量が少ない
・皮膚や粘膜の乾燥症状(皮膚・髪・爪、鼻・のど・口・眼・陰部など)
・寝汗、手足がほてって眠れない、手足だけ布団の外に出す
・足腰のだるさ
・聴力の低下、耳鳴り
【腎陽虚(じんようきょ)】
「腎陽虚(じんようきょ)」とは、「腎陽」が「不足(=虚)している」状態のこと。身体を温めたり、代謝を推し進めたり、パワーのもとである「陽気(ようき)」が不足しています。そのため、疲れやすく、身体が冷えやすく、水をうまくさばけないため浮腫みやすくなるのが「腎陽虚タイプ」です。
身体を冷やさないように、腰回り、足首などを温め、生ものや冷たいものを控えましょう。
◆腎陽虚タイプにあらわれやすい症状
・閉経、経血量が多い
・精神的にも肉体的にも元気がでない
・寒がり、足腰や手足が冷たく浮腫む
・おりものがやや多め
・軟便~下痢傾向
【その他の要因】
このように根本的な部分の陰陽のバランスが大きく狂うので、ほかの部分にも大きく影響を及ぼします。
もともとストレスでイライラして熱をもちやすい人は、さらにイライラして熱がひどくなるし、もとも冷え気味で胃腸が悪い人などは、冷えや胃腸の弱りが悪化します。胃腸が悪くなることにより、精神活動を司る心へのエネルギー供給ができなくなり、精神的に不安定になるひともいます。いわゆる更年期うつです。
このように腎陰虚や腎陽虚をベースとしながらも、もともとの肝鬱や脾虚、湿痰・瘀血などその他の要因が絡み合うことで症状を複雑化させます。うまい人ほどこれを丁寧に分析し、順序良く改善させていくことができます。
ちなみに面白いのが、腎陰虚の方によく使う代表的なツボである照海や水泉、このツボは乾燥して凹んでいる。腎陽虚によく使う胞肓というツボは、冷えて弱っていることが多い。
ツボはよく観察すると、すごく面白いのです。そして身体が良くなると同時に、乾いていたツボは潤ってきて、冷えて弱っていたツボは暖かく充実してきます。





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