原因を見極めることの重要性。

先日、来院された新患さん。

80歳を超えるご高齢で、全身の痛み、特に肩や股関節の強い痛みを訴えて来院されました。

お話をうかがってみると、整形外科で首と腰の牽引療法を受けたあとに痛みが出現したとのこと。

 

問診情報だけでいえば、牽引療法による関節や筋肉への負荷がかかったことによる症状のように思えます。

しかし、症状の状況や体表所見(舌診・脈診・その他ツボの反応)を総合的に判断すると、どうも腑に落ちません。

そこで、さらに深堀して話を聞いてみると、この症状が発症する1年前にご主人を亡くされ、それ以外にも主訴発症直前にも大きなストレスが続いていたとのこと。

 

「やはりそうか」と確信し、精神的ストレスに関与するツボの中から、もっとも強く反応の出ているツボを1つ選び抜き、いつも通り1本のみ鍼を打ちました。

治療直後から肩の痛み、股関節の痛みともに緩解し、涙を流して喜んで帰られました。

 

当院では、「何が原因で、どのような病理で、現在の症状が現れているのか?」を明確にすることを重要視しています。

それが明確にならなければ、治療はできません。

ですから、患者さんから「こんな症状があるのですが・・」と訴えを聞いた際は、その患者さんの体質や生活習慣を踏まえた上で考え得る可能性の中から、「睡眠は?飲食は?便通は?ストレスは?」など、原因を見極めるために問診を重ねます。

その問診で得た情報と、脈・舌・ツボの反応などを総合的かつ多面的に分析し、その時、その患者さんにとって、もっとも適切なツボに、適切な刺激の鍼を1本打つのです。

 

今回の症例の場合、はじめの問診だけでは原因が見えてきませんでした。

しかし、ここで妥協することなく患者さんの話を詳しく丁寧に聞き出すことにより、原因を見つけ出すことができました。

1本の鍼で劇的に効果を出すことができたのは、そのお蔭です。

決して魔法などではなく、医療としての鍼灸を追究していれば誰でも再現可能な事実です。

輝鍼灸院