ご高齢の夫人、めまいの3症例

ご高齢の夫人、めまいの3症例

高齢者 めまい 鍼灸

ここ1ヵ月ほど、70代後半から80代後半のご婦人3名のめまい治療をさせていただきました。

そのうち、お一人は以前から通って下さっている患者さんで、お二人は最近初診で来られた患者さんです。

高齢者の眩暈(めまい)に至るまでのメカニズム

高齢になると、身体の根っこの部分にある「潤い」が不足してきます。

樹木でも若木よりも老木の方が「潤い」がなくなります。

これは自然の摂理です。

中医学ではこの状態を「腎陰虚(じんいんきょ)」と呼びます。

腎陰虚は悪化すると肝腎陰虚(かんじんいんきょ)となり、さらに悪化すると肝陽上亢(かんようじょうこう)という状態に至ります。

イメージとしては、身体の中の潤いが不足することにより、体内の陰陽バランスがくずれ、潤いである陰が不足することにより陽が昂ぶり、陽が昂ると体内に火が生じ、火が風を生み出し内風となり、内風が眩暈(めまい)を引き起こすというものです。

教科書的には高齢者の眩暈(めまい)は、このパターンが多いとされ、実際にそうだとは思うのですが現実の臨床ではこの基本に加え、何かしら加味しなければ治らないケースも多々あります。

3名の患者さんのそれぞれの診立て

実際にこの3名の患者さんも、基本としてはこの肝陽上亢がベースにありつつも、それぞれ+αの問題があり、それらを対処することにより皆さん迅速に治すことができております。

具体的には、

①本:肝腎陰虚 標:肝鬱化火内風

この方は普段から通って下さっている患者さんで、いつもは肝腎陰虚に対する治療をしています。しかしながら一時的に強い疲れがあり、肝鬱化火内風を起こしたことにより急激で激しい眩暈を発症し、病院に運ばれるほどでした。

しかし、まずは標である肝鬱化火内風を対処することにより、短期間で治すことができました。今は症状が落ち着いてきたので、本である肝腎陰虚に対する治療にもどしていきます。

②本:肝腎陰虚 標:肝鬱気滞、空間右上、少陽胆経左右差

こちらも肝腎陰虚が基礎としてありつつも、精神的なストレスから肝鬱気滞を生じ、身体の左右のバランスが崩れて起こる眩暈でした。精神的なストレスを緩解させつつ、身体の左右のバランスを調える治療をすることにより、1か月ほどで治すことができました。

③本:肝腎陰虚 標:心血虚(心神不寧)

この方の場合は89歳と高齢であり、やはり肝腎陰虚はあるものの、それだけでなく心血不足による心神不寧が主訴に大きく影響していました。不眠・不安・動悸などの症状を伴っていましたが、これらの症状を調えることにより、この方も順調によくなりました。

本、標と記載していますが、本=根本、標=枝葉というイメージでとらえていただければ問題ありません。

皆さん、週に2~3回のペースで通院していただき、2週間~1ヵ月ほどでほぼ完治しています。

ご高齢の方の眩暈は治しにくいとされますが、このように診立てがしっかりはまり、きっちりと通っていただくことができれば、早期に改善することも可能です。

やはり丁寧に病理を分析し、治療することの重要性を感じる3症例でした。

筆者プロフィール

原元氣 - Hara Genki -

輝鍼灸院 院長 / (一社) 北辰会 正講師 運営会議議長 / 森ノ宮医療学園 非常勤講師

2004年、北辰会創始者(現会長)である藤本蓮風先生に師事。内弟子生活を経て2008年に独立し、神戸市にて輝鍼灸院を開院。臨床の傍ら北辰会の正講師・運営会議長として会の運営および後進の指導に携わり、北辰会方式の啓蒙活動を行っている。日本では伝統鍼灸の真の価値が認知されておらず、美容鍼灸や現代鍼灸が主流となっている現状を覆すため、ブログや日々の臨床を通じて伝統鍼灸を広める活動をしている。

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