【仰向けで眠れない程の痰のつまり・咳込み】2年間苦しんだ症状が約4ヶ月で改善した症例

1. 患者様プロフィール

  • 年代・性別:60代・女性

  • 主な症状:喉の痰のつまり感・からみ(透明〜粘り気あり/過去に黄緑色)、むせ、慢性的な咳

  • 症状の詳細

    • 仰向けに寝ると唾液が入ってきてむせてしまうため、横向きでしか眠れない状態が2年続いていた。

    • 歯科、美容院、入浴時など、背もたれに軽くもたれる姿勢でもむせてしまう。

    • むせて咳で出そうとすると喉に強い痛みが出る。

    • 食事は摂れているものの、主訴の発症に伴い体重が2kg減少。

これまでの経過・体質

  • お体の傾向

    • もともと繊細で几帳面な性格。多夢。心配事があると肩こりが出やすいなど、気になることがあると体調に表れやすい傾向。

    • 細かい作業が好きで、集中すると没頭してしまう面がある。

  • 既往歴・生活史

    • 生理前半にガンガンと激しく痛む頭痛(腹痛よりも頭痛が顕著だった)。

    • 20代での結婚・出産後、家庭内での慢性的な強いストレスにより体調が悪化。

    • 30代〜50代にかけて精神的ストレスから食事が摂れなくなり、胃潰瘍を2〜3回発症。疲れやすく、毎晩1時に全身の発疹・強い痒みが出現。1時間会話するだけで声がガサガサになり出なくなるほどの消耗を経験。

    • 50代半ばに大きなストレス要因が一つ解消され、体調が大きく回復。

    • 60歳頃に肺炎を発症。

    • 2年ほど前に明確な原因なく「痰のつまり・むせ」が突然発症し、徐々に悪化。

2. 初診時の問診と東洋医学的見立て(弁証論治)

対話や体質チェック(脈・お腹・お顔立ち)を通じて、長年の歴史と現在の症状の「つながり」を以下のように紐解きました。

中医学的見立て(証)

  • 診断「肝気上逆(かんきじょうぎゃく)」 および 「心血虚(しんけっきょ)」

原因の解説

  1. 肝鬱気滞と胃腸への波及: 繊細な性格と長年の強い家庭内ストレスにより、自律神経を司る「肝」の気が滞りました(肝鬱気滞)。その緊張が胃腸(脾胃)に影響を及ぼし、過去の食欲不振や胃潰瘍(肝胃不和・肝脾不和)を引き起こしていました。

  2. 血の不足と気の突き上げ: 長年の摂食量減少に伴い、体に十分な「血(けつ)」を生成できず、慢性的な血虚状態に陥っていました。血は上がった気を抑え込む重石の役割も果たすため、血の不足により「肝の気」が制御不能となって上方へ突き上げる状態(肝気上逆)を招きました。

  3. 喉のつまり・むせの発症: もともと月経時の頭痛など「気が上に昇りやすい体質」をお持ちであったところに、肺のトラブル(肺炎)などが重なり、上方へ突き上げた気が唾液や痰を巻き込んで喉に停滞し、仰向けになれないほどの強い「むせ・つまり感」として表出していました。

3. 施術内容と改善の経過

当院では、お身体に過剰な刺激を与えない「一本鍼(たった1本のツボへの施術)」にて体内のバランスを根本から整えていきました。

使用したツボと選穴の理由

  • 百会(ひゃくえ)[初期4回]: 初期は「気が頭や喉へ激しく突き上げている状態(肝気上逆)」が顕著であったため、頭頂部にあるツボ(百会)を用い、上逆した気を引き降ろすアプローチを行いました。

  • 左 心兪(しんゆ)[5回目以降]: 数回の施術によりお身体が「血の不足(心血虚)」をメインとする状態へ移行したため、背部にある心兪を選穴。足りない血を補いながら(補血)、上がった気を優しく鎮める施術へ切り替えました。

施術経過(週2回のペースでスタート)

  • 1〜4回目: 初回施術直後から症状が和らぎ、4回目の施術後、1年ぶりに「仰向けでぐっすり眠れた」と大変喜ばれました。

  • 7〜10回目: 自然と食欲が湧くようになり、10回目を迎える頃には痰のつまり感がかなり減って楽になりました。

  • 11〜20回目: 順調な回復の反面、一時的な停滞期に入り気持ちの焦りや不安も見られましたが、週2回の通院を継続。仰向けで眠れる日が増え、咳も減少。20回目には普段の生活でほとんど気にならないレベルまで安定し、長年抱えていた胃腸の不調も消失しました。

  • 21〜28回目: 良い状態をキープ。仰向けで眠れる日がさらに増え、この時期には咳き込むことがほとんどなくなりました。

  • 29〜42回目(約4ヶ月目): 状態が非常に安定したため「週1回ペース」へ移行。主訴は完全に気にならなくなり、忙しい日があっても体調が崩れにくくなりました。お腹が自然と空いて美味しく食事を摂れる体質を取り戻され、無事に施術終了(卒業)となりました。

4. 院長からの総評

治療を始めて初期の段階で劇的な変化が現れ喜んでいたのも束の間、その後一時的な「停滞期」がありました。一度良くなっただけに、停滞期に入ると「このまま治らないのではないか」と精神的にも不安になり辛い時期もあったと思われますが、患者様が私を信じ、ご自身の体を信じてよく頑張って治療を継続してくださいました。

病気治しをしていくうえで、何事もなく一直線にスムーズに治っていくケースは極めて稀です。波や紆余曲折を経験しながらも、諦めずに継続して頑張った先にこそ、病を根本から克服できる未来があります。

こういった患者様の懸命な姿を見るたびに、「病気は私が治しているのではなく、患者様ご自身が治している」という事実を再確認させていただき、私自身も謙虚な心へと戻らざるを得ません。

2年間苦しまれた症状から解放され、再び仰向けで安心して眠れる日常を取り戻していただけたことを、心より嬉しく思っております。

輝鍼灸院