伝統鍼灸解説ブログ

鬱証:うつ病 

鬱証(うつしょう)とは、現代風にいえば、うつ病のことです。

精神的ストレスや飲食の不摂生・運動不足などにより、気のめぐりが悪くなることによって起こります。

臨床的には、精神的抑うつ・情緒不安定・胸や肋が脹って苦しい・よく怒ったり泣いたりする・咽が異物でふさがれたような感覚がある・不眠など、さまざまな症状を呈します。

このページでは、中医学的に考えられる7つのパターンの鬱証を解説していきます。

1.肝気鬱結

〔病理〕

不安や怒りから肝の条達(気を通じさせる力)機能が失われ気が滞ると、肝気が鬱結して気鬱になる。

〔特徴〕

精神的抑うつ・情緒不安定・胸や肋が脹って苦しい・遊走痛(痛みの部位が一定しない)・げっぷ・ため息が多い・上腹部が苦しい・食が進まない・大便不調(便秘や軟便・下痢)。

2.肝鬱化火

〔病理〕

1の肝気鬱結が長引いて気鬱が火に変化し、肝火が燃え上がると火鬱を形成する。

〔特徴〕

胸や肋が脹って苦しく灼熱痛を伴う・イライラしやすく怒りっぽい・口の中に苦みや酸っぱさを感じる・のどの乾き・耳鳴り・目の充血・胸やけ・便秘・小便の色が濃い。

3.血行鬱滞

〔病理〕

気鬱が長引くと血にも影響を与え、血行が悪くなって瘀血が滞り、血鬱を形成する。

〔特徴〕

精神的抑うつ・イライラ・不安感・不眠・健忘症・頭痛・胸や脇に刺しこむような痛みがある・身体の一部が冷たくなったり発熱したりする。

4.痰気鬱結

〔病因病機〕

気が滞ると津液の運行も悪くなり、凝集して痰を形成すれば痰鬱になる。

〔弁証〕

精神的抑うつ・胸肋部の脹痛・胸と上腹部の痞悶・のどに物が痞えた感じがあり吐き出そうとしても吐き出せず吞み込もうとしても呑み込めない。

痰気鬱結化熱では、口が苦くて粘る・便秘。

5.肝陰虧虚

〔病因病機〕

鬱滞が長引いて陰血を消耗すると、肝陰不足になる。

〔弁証〕

めまい・耳鳴り・目が乾いてまぶしい・物がはっきり見えない・頭痛・イライラ・怒りっぽい・顔と目が赤い・筋肉の痙攣・四肢および体幹部のしびれ。

6.心陰虧虚

〔病因病機〕

悩みや悲しみなどの精神的ストレスがあると、心まで損傷し、心気心血が不足する。

〔弁証〕

動悸・健忘症・不眠・多夢・潮熱・盗汗・口とのどの乾き。

7.心脾両虚

〔病因病機〕

鬱が長引いて脾を損傷すると、接触量が減少して気血の生化が不足し、心脾両虚となる。

〔弁証〕

顔と唇に艶がない・考えすぎて疑り深い・頭のふらつき・動悸・不眠・多夢・精神疲労・健忘症・食が進まない・腹脹・泥状便。

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