硬いものを、柔らかく。
治療で脈を診ている時に、患者さんから「先生、いったい何を診ているんですか?」と聞かれることがあります。
脈診では、脈の速さ・幅・力などとともに、脈の硬さ・柔らかさも診ています。
老いと若さ。
硬いものの代表例としては、老いがあります。
年齢を重ねていくと、心も身体も柔軟性を失っていきます。
樹木に例えると、若木はしなやかで潤いがあり、柔らかさがあります。
老木になると、潤いがなくなり、脆くなり、硬くなっていきます。
人間に例えると、赤ん坊は泣いたり笑ったり、感情がコロコロと動き回ります。
しかし、年を重ねるにつれて人は頑固になり、執着が生まれがちです。
若いうちは身体も柔らかく動きも円滑ですが、老いとともに身体は硬くなり動きも緩慢になります。
これはある意味、生から死への自然な流れであり、人の一生における春夏秋冬のようなものとして、厭うのではなく愛すべきものです。
硬くなることによる支障
しかしながら、やはり硬くなると様々な支障が生じます。
過労やストレスが重なると肩や背中が凝ってきて、徐々に眠りが浅くなり、便通が悪くなり、こういった軽度な症状から波及して様々な重い病が発生します。
心が硬くなると執着や緊張が生まれ、精神的なイライラや抑うつ感など、負の感情が生まれてきます。
精神的にも肉体的にも、硬さにより、身体が悪いほうへと流されていきます。
柔らかさ、しなやかさを取り戻す。
鍼灸医学では、この硬さから心と身体を解放し、柔らかさやしなやかさを取り戻すことを目指します。
治療が終わったあとに、必ず脈やツボの状態を確認し、硬い脈が緩み、硬いツボが緩んでいれば、治療がうまくいったことを意味します。
皆さんそうですが、日常の忙しさや人間関係などで緊張が極まり、疲れ切っています。
疲労や緊張は人の心と身体を硬直化させます。
硬くなることは老いや病に直結します。
ですから、鍼灸で心と身体を柔らかくしなやかな状態に戻し、少しでも老いや病から遠ざけるようにする必要があるわけです。
自分でできること。
ご自身でも柔らかさ、しなやかさを取り戻すことができます。
当院でいつもお勧めしているのは、まずはゆっくりと歩くこと。
肩の力を抜き、呼吸を調え、ゆっくりと30分ほどお散歩をしましょう。
その際、できれば荷物をもたず手ぶらで歩くと、身体の左右前後のバランスも崩れることがないので、歩くだけでバランスの調整にもなります。
精神面では、とらわれないこと。執着しないこと。
・・でなければならない。
・・であるべきだ。
という考えからは離れ、まずは自分自身を愛し、自由にさせてあげて下さい。
自らが解放され、自由に生きることができれば、人に対しても寛容になれます。
皆さんが柔らかく、しなやかに、自由に生きていけることを応援できるよう、鍼で応援させて下さい。
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