たくさん鍼をうっても効いてしまうことの弊害。
当院では基本的に鍼を1本しか打ちません。
これはいつも説明している通り、身体の治ろうとする力を一極集中させるため、そしてどの鍼がどのように効いたのかを明確にし、検証しやすくするためです。
では、複数の鍼を打つと効かないのかといえば、そうではありません。
病に関連するツボの中から、特に反応のあるツボにある程度適切な鍼を打てば、効いてしまうのが鍼の厄介なところなのです。
また複数の鍼を打った方が患者さんの満足度もあがると考える鍼灸師もいるでしょう。
あまり詳細な分析を加えずとも、反応のあるツボに鍼を打てば効いてしまうこともあるということです。
ただ治ればいいのか?
治ればいいじゃないかという意見もあるかもしれません。
しかしながら、この場合に鍼が効くのは、病の程度が軽いものだけです。
病が重く複雑になればなるほど、1本に絞り込んだ方が効き方が違いますし、尚且つ、もし病の分析やツボの選択を間違えていた場合、1本の鍼であれば再検証して治療方針を立てなおすことが可能です。
複数の鍼を一度に打ってしまうと、治ってしまえば結果オーライでいいかもしれませんが、治らないときに軌道修正が難しくなるのです。
このような理由で私は1本の鍼にこだわり続けておりますし、そのお蔭でどのような時に、どのようなツボに、どのような鍼をすればよいのかを、より明確に経験値を積むことができています。
曖昧な治療をしていないので、確固たる自信も生まれ、その自信は鍼を通じて患者さんにも伝わります。
曖昧な治療を続けると臨床能力は高まらない
たくさん鍼を打っても効いてしまうことの弊害。
それは曖昧な治療でも治ってしまうことにより努力を怠ってしまい、術者がそれ以上に実力をあげることができなくなること。
そのことにより、患者さんにとっても不利益が生じてしまうことです。
鍼医者であれば常に自身の理論を高め、技術を磨き続けなければなりません。
ごまかしのない、1本の鍼にこだわりつづけることが重要なのです。
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